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足は止めることなく視線だけをチラとこちらに寄越す須藤さんは、どこか複雑で控えめな態度であたしを覗く。
「体は……───大丈夫ですか」
言い淀みながら、それでも語尾を強めた質問だった。
握られた手に、少し力が籠もった気がする。
一瞬質問の意図が読めないあたしは、キョトンとして口を噤んだ。
───体、って。
もしかしてセックスの事?
遠巻きの疑問を頭で理解したあたしは、自分の尖ったヒールに視線を落としながら軽く頷いた。
「まだ、大丈夫です」
冷たい空気が吹き続け、鼻が強張りそこを軽く押さえる。
須藤さんからの視線を感じつつも、至っていつも通り努めた。
「そっか」
見ていなくても、フワリと笑った。
そんな気がした。
「寂しかったら遠慮なく、俺に飛び込んで下さいね」
「……いやそれは」
「彼氏なんですから」
「……」
あたしを縛り付けるそのワードに、うっと口を詰まらせた。
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