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一気に状況が変わる。
シュミット家の問題なんて大したことはない、ブラッキン家の方が深刻だ!
とりあえずアヤに電話をしてみる。
「ただいま電話に出ることができません」
よくあるアナウンスに更に憮然とする。
そういえば生徒のレッスンがあるって言ってた。
1人か2人しか生徒のいない教室なのに、何だか忙しそうだからおかしいって思ったんだ。
イライラが沸き上がる。
いつもそうだ!
アヤは肝心なことは絶対に言わない。
ヴァイオリニストの僕と、聴衆だった彼女の間に、彼女はどこか壁を作ってしまっているのだ。
特に今回、アヤは子供たちにも箝口令を出してるはずだ。
うちの子たちも出演するはずなのに、誰も言わないし、僕の前でその素振りすら見せないのはそういうことだ。
ここまでして発表会を隠し通そうとする理由は聞かなくてもわかる。
彼女もピアノを弾くからだ。
アヤは僕に演奏を聴かれるのを死ぬほど嫌っている。
僕が死ぬほど聴きたいと思っているのにだ。
「くそー!」
思わず声に出た。
「ジム、大丈夫か?」
心配するルドに僕は容赦なく声を荒げる。
「感情をむき出しにしてケンカできる君たち夫婦と、ケンカはないけどそこに感情のやり取りがない僕たち夫婦、どちらが上手く言ってるのかな?」
「べつに感情のやり取りがないってことはないだろう。時々ケンカしてるじゃないか」
「いや!僕たちみたいな方が離婚するんだよ」
「確かにお前ん家の夫婦ゲンカ、数は少ないけどやる時は恐ろしいものがあるからな」
「フォローになってない!」
何てことを言うんだ!
「ねえ、ジム」
これまで黙っていたアルが突然口を開いた。
しまった、静かだからいるのを忘れてた。
「ピアノって何の木でできてるの?」
「・・・」
大人として少し恥ずかしくなった。
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