第1章

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今は武器を多く国の為に造らないといけない。 この多忙な時期が安定してからの方が良いだろうと言った。  するとヴェルンドは、笑いながら妙な事を言った。 つまりは剣を沢山、造って軍へ送れば良いだけですね。 言うのは簡単であるし、君の腕は確かだ。しかしだ。  兵士は命がけで戦うのだ。強靭な確かな剣でないと 送りかえされてしまうし、そうなると信用を失う。 だが、いつもより丁寧に1本1本を造っていては そんなに速く良い仕事はできない。  気持ちは解るし反対はしていないのだから 焦る事はない。これもまた修行なのだ。  そのように言っても、ヴェルンドは笑いながら 簡単な事なのに、それほど慎重にならなくても 何も問題はないから、任せて下さい。と言う。  その強情な言葉に慢心を感じた親方は、試すように ならば一晩で100本の強靭な剣を造ってみろ。 それほどの事が出来て、本物の鍛冶職人なのだから。 と、無理難題を言って諦めさせようとした。  が。  ヴェルンドは笑いながら、ではすぐに仕事を 始めますので、今夜は食事は要りません。 夜明けにニワトリが、鳴くまでには100本。 寸分の狂い無く、最高の剣を打ってみせます。  そういって仕事場へ入っていった。  親方と娘は、そのばん酷く強い風が吹くので 戸締りを気をつけていた。鍛冶屋から火が出ては 洒落にもならない。  夕食が済んで、娘が片づけを終えてヘルヴォルは 親方の頬におやすみのキスをし、自分の部屋に戻って 跪いて神様に祈った。どうか何も怖い事が無いように お守り下さい。という感じで長く祈った。  その間もひたすら仕事場では剣が出来上がっていく。 ラング親方が、様子を見に行くとヴェルンドの方は 楽しそうに鼻歌まじりで、熱い鉄を打ち続けていた。  既に10本以上は出来上がり、立てかけてあった。 本当に、この速さなら一晩で100本くらいは造って 仕上げてしまうだろう。  頼もしい青年だと感心して、邪魔しないように 仕事場を出ようとした時。  ヴェルンドに炉の火が当たって壁に影が映っている。 どうにも揺らめいているせいか、人間の姿に見えない。 気のせいだと思って、居間に戻り珈琲を飲んだ。  すると娘のヘルヴォルが真っ青な顔で一階に来た。 どうしたと訊ねようとする、父親の口を手で抑えて 小声で囁くように耳打ちしました。  風が心配で寝室で祈っていた時、精霊の声がした。
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