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「あれ?無知君と咲弥さん、二人で来たの?」
学食では丁度朝御飯の時間で人が多かったが、敦士のことは直ぐに見つけられた。
大量の栄養ドリンクを飲んでいるから、机に空き缶がたくさんある。
「そこで出会ったんですか?」
「いや、無知君は昨日俺の部屋で朝を迎えたよ」
何となく含み笑いをする。
「え!?え、じゃあ無知君付き合ったの?」
「いえ、よく言えないんですが…うーん、何て言えばいいのかな」
「お、無知君番号札呼ばれたよ、いっといで」
「あ、はい!」
小走りで受け口に向かった無知君を見て、敦士は聞いてみた。
「泊まったってことは、付き合えたんですか?」
「うんにゃ、昨夜色々あってさ、思わず抱き締めたらそのまま寝ちゃって、俺の部屋に運んだらしい」
「らしい?」
「残念ながら俺も曖昧にしか覚えてないんだよねー」
でも腕枕はしたよとニッコリ笑った。
「それは、相当好かれてるんじゃないですか?気を許したから寝ちゃったんだろうし…」
「やっぱそうかな!?脈ありかな!?俺喜んでいいのかしら」
咲弥はニヤニヤしてる。多分、僕の考えでは前より距離が縮んでる感じだな。
それにしても驚きだ。無知君は本当は甘えたいんだろうけど、それを隠してる。自分でも気付かないようにしてる。
それがこうして甘えられる人に出会ったなんて、僕としても嬉しい。
「あ、俺も呼ばれた、行ってくる」
咲弥さんが行ったと同時に無知君が帰ってきた。この子はいつもオムライスだなぁ。
「咲弥さん、何か言ってました?」
「え?あ、あー、喜んでたよ、無知君と距離が縮まったって」
「それはよかった、めんどくさいとか言われてたらどうしようかと思ってました」
「咲弥さんがそんなこと言うわけないじゃない」
「ですよね、でも本当に居心地良かったです」
「でもそれってさ…恋じゃないの?」
「恋?」
「傍にいて安心できる人なんてそんなにいないと思うけど…無意識の中で好きなんじゃない?」
「うーん…よくわかりません、どうするのが恋なのか…もっと大きくなったらわかりますかね?」
「充分なついてると思うけど…そうだね、何が恋なのか今はわからなくてもそのうちわかるようになるさ、あ、咲弥さん、戻ってきた」
「何々ー?何の話ー?」
「な、内緒です」
無知は少し顔を赤くしてた。咲弥はわけがわからない顔をして座った。
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