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「また三人で授業したいけどね」
凜は笑った。
「これで無理矢理勉強出来ないって言わなくて済むね」
「やっぱり気づいてました?」
「告白された時から気づいてましたよ」
「あぁ、恥ずかしいな」
「頑張って勉強して、大学行って、私と結婚して」
凜は上目遣いだった。それはわざとではなく、単に辰がでかすぎるからだ。
でも辰はそんな凜が可愛くて可愛くて仕方なかった。
「先に言われてしまいましたね…僕にもプライドがあるんで…凜さん、俺と一緒になってください、生涯愛します」
優しく凜の手をとる辰は、しっかりと凜を見つめていた。
「…はい、こちらこそよろしくお願いします」
凜は真っ赤になりながら、その手をとった。
「結婚指輪はまだ待ってもらえませんか?」
「あはは、いいよそういうの」
「いえ、俺がしたいんです、凜さんの好きなもの何でもあげたい、喜ばせたい、指輪は一緒に買いにいきましょう」
ここまで言われると、本気で信じていいと思えてくる。
もう逃げ場はない、でももういらない、この人と生涯添い遂げますから、神様、もう私から何も奪わないでください。
空を見上げると満月。街灯で気付かなかったけど、よく見ると明るい。
「綺麗」
「え?凜さんのことですか?」
この子は天然なのかマジなのか…。
「月だよ、私久しぶりに見た、ここでよく遊んで、帰りに月を見て帰ったものよ、懐かしいなぁ」
「…俺もその場に居たかったです」
「え?何で?」
「俺は今の凜さんしか知らないので…もう少し早く産まれたかった」
「でも同じ歳だったら、部屋が遠ければ一生会わない関係になっていたかもよ」
凜さんは笑う。
「大丈夫です、いくらこの広い施設でもあなたを見つけます、運命だと俺は思ってるんで」
「運命か…」
私からは恥ずかしくて言えないけどさ、私も運命だと思うの。
だから、どんな言葉でも新鮮で嬉しくて…。ひとつひとつ知るたびに好きになっていくんだろう。
明日増子先生にお礼言わなくちゃ、相談にのってもらってたから。
言うのは恥ずかしいけれど、話聞いてくれたし…。
初夏だが夜は肌寒い、辰は凜に上着を被せると、そろそろいきましょうと言った。
もう少し一緒に居たかったなと思ったけど言えない。
別れるとき、またキスをした。
凜は余韻に浸りながら、ふらふらと自分の部屋に戻っていった。
気づかれないふりして、辰も真っ赤に染まっていた。
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