凜先生の幸せ

5/5
前へ
/59ページ
次へ
「また三人で授業したいけどね」 凜は笑った。 「これで無理矢理勉強出来ないって言わなくて済むね」 「やっぱり気づいてました?」 「告白された時から気づいてましたよ」 「あぁ、恥ずかしいな」 「頑張って勉強して、大学行って、私と結婚して」 凜は上目遣いだった。それはわざとではなく、単に辰がでかすぎるからだ。 でも辰はそんな凜が可愛くて可愛くて仕方なかった。 「先に言われてしまいましたね…僕にもプライドがあるんで…凜さん、俺と一緒になってください、生涯愛します」 優しく凜の手をとる辰は、しっかりと凜を見つめていた。 「…はい、こちらこそよろしくお願いします」 凜は真っ赤になりながら、その手をとった。 「結婚指輪はまだ待ってもらえませんか?」 「あはは、いいよそういうの」 「いえ、俺がしたいんです、凜さんの好きなもの何でもあげたい、喜ばせたい、指輪は一緒に買いにいきましょう」 ここまで言われると、本気で信じていいと思えてくる。 もう逃げ場はない、でももういらない、この人と生涯添い遂げますから、神様、もう私から何も奪わないでください。 空を見上げると満月。街灯で気付かなかったけど、よく見ると明るい。 「綺麗」 「え?凜さんのことですか?」 この子は天然なのかマジなのか…。 「月だよ、私久しぶりに見た、ここでよく遊んで、帰りに月を見て帰ったものよ、懐かしいなぁ」 「…俺もその場に居たかったです」 「え?何で?」 「俺は今の凜さんしか知らないので…もう少し早く産まれたかった」 「でも同じ歳だったら、部屋が遠ければ一生会わない関係になっていたかもよ」 凜さんは笑う。 「大丈夫です、いくらこの広い施設でもあなたを見つけます、運命だと俺は思ってるんで」 「運命か…」 私からは恥ずかしくて言えないけどさ、私も運命だと思うの。 だから、どんな言葉でも新鮮で嬉しくて…。ひとつひとつ知るたびに好きになっていくんだろう。 明日増子先生にお礼言わなくちゃ、相談にのってもらってたから。 言うのは恥ずかしいけれど、話聞いてくれたし…。 初夏だが夜は肌寒い、辰は凜に上着を被せると、そろそろいきましょうと言った。 もう少し一緒に居たかったなと思ったけど言えない。 別れるとき、またキスをした。 凜は余韻に浸りながら、ふらふらと自分の部屋に戻っていった。 気づかれないふりして、辰も真っ赤に染まっていた。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加