メアの瞳

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彼方はあれから毎日話にきた。でも日に日に痩せて、顔色も悪くなっていった。 さすがの林も気づいたのだろう、大丈夫?と声をかけるようになった。 でもその度に 「勉強会で忙しくて」 と誤魔化す。 今までの彼方の行動パターンでは、今の時間は勉強会のはずだ。それを知っているから、余計心配が募る。 (本当は病気なんじゃないかな…) それも大きな病気な気がする。でも本人は元気に振る舞ってる。 余計なこと言わない方がいいのかな…でも、心配だから。 「また痩せましたね…」 と言ってしまう。 「うん、ちゃんとご飯食べてる?僕から見ても具合悪そうだよ、たまには部屋でのんびりしなよ」 林もそう言うが、本人は納得しない。 「毎日メア君に会いたいので」 それでシャットアウト。他はなにも言わない。 以前のように些細なことを話したりしなくなった。何だろう、少し焦っているような感覚。 今度公園行かない?とか…僕は勿論断る。まだ怖いから。 でも必死になってる姿を見ると、本当に悪い病気で、今のうちにと考えてる気がする。 何も話してくれないけど…。 「じゃあまた明日ね」 彼方が席をたつと、どんっと尻餅をついた。 「ちょっと、本当に大丈夫かい?保健の先生のとこ行こうよ」 「あ、大丈夫です、ちょっと滑っちゃった」 苦笑いの先には濡れた瞳。痛かったのか…悲しかったのか。 失礼しますと居なくなると、 「彼方君大丈夫かなぁ、あの日入院してから近い様子がおかしいよね?」 これは林も気づいていたらしい。 「なんか…もし大きな病気だったら…って、不安になります」 「顔色も悪いし痩せたし…なんか癌みたい」 「そんな症状が出るんですか?」 「うーん、僕はカウンセリングの資格しか持ってないから何とも言えないけど…昔ここにいた子が癌で亡くなってね、その症状と似てるんだ」 「癌…」 「いや、あくまで僕の推測だから気にしないで、本当に寝不足かもしれないし」 「…死んじゃうのかな…」 「こら、そんな縁起でもないこと言わないの!」 「先生は気付かないの?瞳の奥が助けてって叫んでるの、悲しいものを見るように」 「…そうなの?」 「以前よりだいぶ変わりましたよ…」 林はよくわかってなかったみたいだった。
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