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「悲しくて仕方ない、どうすればいいのかわかってない瞳…僕はそう見えました」
「うーん、気付かなかったなぁ」
「先生は人の痛みがわかるんじゃなかったんですか?」
「正直具合が悪いのはわかるよ、でも彼にとって一番の楽しみがメア君に会うことだから…知らないふりした方がいいかなって…だってわかっちゃったら、二度と来ない気がするんだ…」
「…確かに…」
だからメアもハッキリ言えない。言ったらそのまま消えてしまいそうで。
「大したことないといいんだけどね」
「そうですね…せっかく話せるようになったのに…」
「メア君も少し成長したもんね、昔みたいに怖くなくなったでしょ?」
「彼方さんだけは…」
「うん!よかったよかった」
林は笑うが、メアは複雑な気持ちだった、心配で仕方ない…。
ほんの少し前までは怖くて誰とも話せなかった自分を思い出す。自分でも成長したと思う、少しだけど。
彼方さんのおかげ。本当にそう思う。だから何か感謝しなきゃいけない…そう思ってる。
でも今の僕に何が出来るだろう。自分のことでいっぱいいっぱいで…。
そんなことを最近考えるようになった。
苦しいだろうな、本当は部屋で寝たいだろうな…それでも会いに来てくれるから…。
ありがとうと伝えたい。
僕は困っていた。
身体が鉛のように重い。
宣告されてから一ヶ月、自分の身体が上手く動けなくなってしまった。
でもメアには会いに行く、勉強会がある日は無理矢理受けにいく。無駄な時間を使ってるけど、ずっと行かないと皆にバレてしまうから。
でも予想以上だった。癌をなめてた。こんなに悪化していくなんて。
吐き気がして何も食べられない、点滴で栄養をとる。痛み止めも効いているのか効いていないのか。
髪の毛の件は了承してもらった。日々無くなっていく髪のハゲの
部分に貼っていく。
見た目にはわからないと思う。風呂に入っても大丈夫、残りの髪のために丁寧に洗うけど。
そんな自分が怖い、もう限界だ、残りの人生大切にさせてくれ、心の中で叫んでる。
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