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何度、医師の手違いだったらと願っただろう。本当は癌じゃなくてただの体調不良で、勘違いしてたよと医師の笑顔を。
日に日にその希望は消えていく。
正直部屋でずっと痛い身体を横にしたい。怪しまれてもいいから楽になりたい、独りで抱え込んでると頭がおかしくなりそうだ。捌け口が欲しいよ、神様。
じゃあ誰を使う?咲弥がベストかな…お喋りだけど、こういうことには口が固いから。
そう思ったらすぐ行動にうつす。
(図書館終わったら僕の部屋に来てくれないか?)
メールをうつと、直ぐに返ってきた。
(俺を襲う気ですかー、いやーん)
…大丈夫かこいつで…。
(大切な話なんだ、それと、他の奴には僕の部屋に行くことを黙っていて欲しい)
(はいはい、了承)
そこでメールは終わる。
僕はベッドに横になる。痛みがまたきた、頓服と薬飲まなきゃ…。
こんな小さい錠剤のくせに…僕を延命させようと必死に働くのか?本当か?おい、答えろよ。
答えろよ!!!
夜八時くらい。
部屋をノックされたので、どうぞと中に入らせる。
「はーい、呼ばれて出てきましては、超天才っ子咲弥くんでーす!」
「テンション高いな、薬か?」
「イヤー、薬なんだけど、好きな子にバレちゃってさ、今減らしてんの、だから素だよ素」
素でそんなテンション高いのか、こいつやっぱ他のやつと違うな。
「ほんで、話ってのは?やっぱり癌だった?」
「うん、癌」
「ほーらみろ、俺が当たってたじゃねぇか!そんで?手術はいつ?」
「手術はしないよ」
「へ?」
「あと5ヶ月だ」
咲弥は予想外の答えに固まってしまった。咲弥的には、癌でした、それを近々手術して治しますくらいにしか考えてなかったから。
「マジで…?」
「僕も冗談だと言って欲しい」
「おいおいおいおい、おかしくねぇ?何で今まで黙ってた?誰にも言わないつもりだったのか?俺にもか?」
「最初はそうだった、誰にも言わないで終ろうと思ってた、でも孤独に耐えられない、だからお前ならって思ったんだよ」
「ば、馬鹿じゃねぇの?!そんな大切なこと…あ、だからお前勉強会サボってたんだな?この間すれ違ったのも治療帰りだったんだな?」
僕は頷く。咲弥は黙る。
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