メアの瞳

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あと5ヶ月か…。 咲弥は図書館で俯いていた。 5ヶ月経ったらあいつは居なくなる…死ぬ。 そんなのいきなり言われてどうしようかと迷っている自分がいる。 皆に言うなって言われたけど、俺は絶対言った方がいいと思う。 だってある日死ぬんだぜ?周りはどうすりゃいいんだよ。 痩せてきたことで皆薄々病気なのを気付いてるかもしれない。そんな時でも黙ってるっていうのか?無理に決まってるじゃないか。 俺を選んでくれたのはいいけど…多分他言しないと信じて言ったんだろう。 彼方が望むなら他言しない、でも俺達仲良かったじゃないか…こんな状況話すなって言われても話した方がいいと思う。 「だって5ヶ月だぜ?…あいつはよく耐えてるな、普通癌は身体を犯して痛みに耐えられないで、横になるのが普通なのに…あいつはどうして動けるんだろう、やっぱ成し遂げたいことがあるんだろうな…そういや好きな子も居るんだっけ。 やるせないだろうな、俺だったら…薬に逃げて現実逃避するだろう。 「どうすりゃいいんだよ…」 こんなこと聞かされて普通になんて相手出来ねぇよ…。 何であいつなんだ?悪いけど、他のやつなら…親しくないやつならこんなに胸は苦しくないのに…。 咲弥の頭の中は彼方でいっぱいだった。これからどう過ごすのかはわからないが、サポートしなくてはと思う。 あいつがバレるのを嫌がるなら、それに協力するしかない。 「あ、咲弥ー」 椿だ、勉強会終わったんだろう。 「ねぇ、最近彼方おかしくない?何か知らない?」 「おかしい?どこが?」 知らんぷりしなくては。 「んー、痩せたし、僕とご飯したときいきなり吐いちゃったんだよね…凄くふらふらしてたから」 「知らねぇなぁ、貧血じゃないのか?」 「だといいけど…眠ってないみたいに目の下隈が凄いし」 「きっと忙しいんだろ?好きなやつに会いに行ってるとか?」 「へー、彼方好きな子出来たんだ、あ、だから華ちゃんと別れたのか、どんな子なの?」 「俺も直接あったことないからよくわからんけど、対人恐怖症らしいよ」 「あらら、面倒なの好きになっちゃったねぇ、まぁ時間が経てば彼方のことだし仲良くなれるよね」 時間が経てば…。 なぁ椿、時間が経つほど彼方は死に近づくんだぜ? そんなこと言えない。
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