雫の涙

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次の日、お兄ちゃんと会った。 たまたま勉強会の間で、学食に食事に来ていたのだ。 僕は昨日の夜更かしで昼頃起きた。だから出会えたんだけど。 「久しぶり雫」 椿は満面の笑みで自分の隣の席を指差した。 「隣においでよ」 「うん!」 手探りでお兄ちゃんの隣の席に座った。 思い出すなぁ、笑ってるお兄ちゃん、もう何年も顔を見てないけど、しっかりその顔は焼き付いている。 「雫、元気かい?悪魔に会っても教えてもらえないから心配してたよ」 「え?お兄ちゃん悪魔君に会ったの?」 「会うも何も、隣の教室だからね、でももう話しかけないでくれって言われちゃったから」 「話しかけるな?」 「相当切羽詰まった顔してたからな、まぁあいつなりに考えがあるんだろうなぁ」 「僕とは昨夜普通に話したよ?あ、でもお兄ちゃんに会ってないって言ってたけど…嘘だったんだ」 「悪魔は普通だったかい?」 「口調は普通だったけど…」 「じゃあ同室のやつらには言わない気なんだな」 「どうしてそんな急に…」 「僕だってわからないよ、本当に急だったんだから」 まぁあいつにはもう関わらない方がいいよとお兄ちゃんは言った。 「でもそうしたら、お兄ちゃんの近況聞けない…」 「勉強会終わった後、質問とかなければ少しの間なら会えるよ、こうやって学食で出会ったように」 「本当!?わぁ、嬉しいなぁ」 「あはは、雫は本当に可愛いなぁ」 他人から見れば凄く仲のいい兄弟に見えるだろう。 でもお兄ちゃんに相談があった。 「お兄ちゃん、変なこと相談してもいい?」 「ん?なぁに?」 こんなこと、自分から言っていいのかな…でも兄弟だから何でも言える仲でもあるし。 「その…好きな人がいるんだ」 え? 椿はビックリしていた。雫に好きな人がいたなんて…全然気付かなかったし、第一そんな話もしなかったし…。 「お兄ちゃんの知ってる子?」 「うん…あのね、信也君なの」 「…信也君?え、本当に?」 「嘘なんかつかないよ、ずっと前から好きだったんだ」 「そうだったんだ…全然気付かなかった…」 「でも僕醜いし、告白しても男同士だから諦めてるんだけどさ」 「醜い?雫が?誰が言ってたのそれ」 椿の顔は一瞬崩れた。 「僕が思ってるの、お兄ちゃんみたいに綺麗じゃないし」 「何言ってるの?雫は可愛い僕の弟だよ?」 「うん…でもね…」 雫の顔が歪んだ。
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