雫の涙

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どんなに頑張ってもお兄ちゃんみたいに綺麗にはなれない。実際目玉を取られたのも、僕が醜いからだったし。 始めから綺麗だったお兄ちゃんにはわかるはずないこの感情。少し嫉妬にも似たもの。 情けない感情。 信也君も時こ々言ってた、椿さんならいいかもと。こんなときにそれを思い出してしまった。 「雫、他人がどう思おうが僕にとって大切な可愛い弟だ、だから自分を醜いなんて思わないでほしい、お兄ちゃん悲しくなるよ」 「お兄ちゃん…僕のためにありがとう」 「雫に関係あることだったらどんなに怖い思いしたって立ち向かうから、お兄ちゃんに任せてね?」 「うん…」 でもお兄ちゃんは僕が今何を思ってるのかわかってない。 包帯の下の窪みから涙が出そうになった。 僕こんなに恵まれてる。 愛するお兄ちゃん、大好きな信也君、それで充分じゃないか。 あ、やばい、包帯が濡れる…。 目は無くても涙が出るから不思議だ。こんなときどうすればいい? 「雫、何かあったのかい?泣かないでくれよ、お兄ちゃん悲しくなるよ」 「ごめ、ごめんねっ、お兄ちゃんのこと大好きなのに、たまに嫉妬しちゃうんだよ…っ目が見えない辛さが、悔しさに変わっちゃって…」 お兄ちゃんは黙っていた。その顔は雫には見えないが、とても悲しい顔。今にも泣きそうな顔。 「あの時助けてあげられなくて、ごめん…」 「いいんだ、お兄ちゃんは代わりに足を奪われたんだから…なのに僕…こんな感情どうすればいいの?こんな汚い心で、お兄ちゃんをきっと傷つけてるよね?ごめんねごめんね」 椿は下を向く。雫の涙は包帯に染みを作り、ぽたぽたと落ちた。 優しく頭を撫でてくれるお兄ちゃん。思わず抱き締めた。温かいお兄ちゃんの熱。僕はごめんなさいを繰り返した。 「僕がいけないんだ、守るべきだった、大好きなのに、身体が動かなかった、お兄ちゃんたまに目を瞑るんだ、雫と同じ世界が見たくて…でも実際は無理だった、怖くて直ぐに目を開いてしまったよ、駄目なお兄ちゃんだ」 「いいんだ、お兄ちゃんはそのままで…大好きなお兄ちゃんに変わってほしくない、今のままのお兄ちゃんがいい…でも、贅沢を言えば今のお兄ちゃんの顔が見たかったな」 少し笑って、雫は椿を見た。 泣いてふやけた包帯から真っ黒な窪みがある。 椿はつい泣きそうになり、雫を抱き締めていた。
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