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咲弥は気が付くと自分の部屋にいた。何だか右腕が痛い、痛いと言うか、重い。
何だろうと目を凝らすと、ビックリした。
無知に腕枕をした状態だった。
何でこんなことになったんだっけ?思い出せ思い出せ…あ。
昨晩誕生日を二人で祝って、無知が泣いて、抱き締めて頭を撫でて…そして俺の部屋に行ったんだった。
あまりに可哀想で、あまりに不憫すぎて。
夜中であったし、泣き疲れた無知を俺のベッドまで運んで、ついでに俺も眠ったんだった。
何か変なことしなかっただろうか?
布団を捲ると、昨日と同じ服、パジャマじゃない。無知も同様に昨日の服のままだった。
なんだ、心配して損した。これでお互い素っ裸だったら、記憶がないのは勿体ないからな。にしても個室でよかった。
片腕を取られてしまったので頭を撫でられない、本当は優しく撫でてあげたかった。この時ばかりは片腕しかない自分を恨んだ。
無知はあどけなく眠っている。小さい頭に、細い手足。見つめていると、無知が寝返りをうった。
もう少し眠らせてあげるか…。まだ図書館の夜勤のやつはいるだろうから。
しかし好きな子が隣に眠っているという状態に、少しムラムラしてきた。そんな場合ではないのは咲弥もさすがにわかっているけど。ちゃっかり腕枕なんかしちゃって。
俺のこと信用してくれたからここにいるんだな。
可愛いなぁ、こんなに近くで見つめるのは初めてだ。いつも机という距離があるから。
火傷の痕もよく見ないとわからないくらいまで治ってる。長い睫毛だなぁ、髪サラサラだし。
咲弥は感じたことのない愛しさに溺れていた。
もう片方腕があれば抱き締められるのに。
あーキスしたい、ぐっすり眠ってるし大丈夫かな、唇じゃなくてもいいから…。
そう思って、額にキスをした。なんだこのドキドキは、ガキか俺は。
自分で突っ込んでいると、無知がうっすら瞳を開いた。でも夢と現実がわからないのだろう、しばらくするとまた瞳を閉じ、また寝息が聞こえてきた。
俺が安心する人になれればなぁ。
少なくとも、気は許してるのだろう。こうして部屋まで来てくれたんだから。
強引に、じゃないよな?多分。記憶が曖昧だ。
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