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特別美味しい訳でもないコーヒーや紅茶を文句を言わずに飲む五人の姿に、僕は思わず頬を緩ませかけた。
そんな素直な気持ちを言うのは、些か恥ずかしいので、胸の奥にでも閉まっておくとする。
しばらくして、竹桷先輩が口を開いた。
「……そういえば、書類の中に新入生歓迎会のことについての企画書を見つけたんだが、今年は何かしたいことがあるか?」
「今年も鬼ごっこにする~?」
「飽きた……」
「だよね~」
鯨井くんが微笑しながら酒井先輩の言葉に同意した。
毎年行っている「新入生歓迎会」だが、ご子息ばかりが集まる一貫の名門校なのに対して、恒例行事となっている「鬼ごっこ」という庶民的な遊び。
去年も「鬼ごっこ」で、今年も同じ内容は確かに飽きたし、意外とハードなので辛い。
「じゃあ……立食パーティは……?」
ゆっくり話して、首を傾げる酒井先輩。その姿に僕は目を輝かせた。含めて酒井先輩の言葉を聞いた途端、期待に心が震えた。
「スズ、立食パーティしたいのか?」
僕を見透かしたのか、音華くんがティーカップを机に置いて聞いた。
「そんなことないよ。僕は何でもいいよ」
「ふぅーん」
同年代である音華くんには敬語を使わない。勿論、音羽くんも鯨井くんも同様だ。
軽い返事をした音華くんは、意味深な笑みをにやりと僕に向けた。
嫌な予感しかしない……。
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