願わくば、時間よ止まれ

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「僕は、副会長をどうして僕が選ばれたのかと聞いてるんです!」 「やなの……?」 「え?」 生徒会長に向かって言っていた僕だが、今までにない自信無さ気な声に振り向くと、つぶらな瞳がこちらを見ていた。 つぶらな瞳というのには、可愛らしい人がするように思えるが、主──生徒会書記、酒井直哉は違う。 体格は肩幅が広い、背中も広い。そして、身長百九十──既に二メートルを越しそうな勢いだ。 「つぶらな瞳」は、確かに巨人といえる人物がしていた。だが、違和感は全くと言っていい程ない。 それは、酒井先輩のあだ名にも関係しているからだろう。 「スズ、俺たち嫌い?」 「嫌いじゃないです、けど……」 「じゃぁ、副会長して?一緒に生徒会のお仕事頑張ろ?……少し大変だけど、皆いい子だからスズも楽しく出来るよ……。スズ、いい子?」 巨大な体格の持ち主であるのに、首を傾げて聞いてくる姿に自分の目は輝いているだろう。 い、犬だ!犬がいる!……可愛いっ!長文を頑張って、ゆっくりだけど話すわんこ……それが更に可愛いっ!! 直哉の生徒間のあだ名は、「わんこ書記」。今ならこのあだ名を付けた親衛隊の気持ちが分かる! 「それでも、や?」 「頑張ります……」 渋々と頷き、無表情ながらも酒井先輩を見る僕の瞳には輝きが備わっていた。撫でたい衝動に駆られたが、ここは我慢だと言い聞かせ、ぐっと堪える。 鈴音の知らないところで、鈴音が承諾した瞬間に、生徒会長は書斎机に座ったまま隠すこともせず、ガッツポーズをした。 幸運なことにそのガッツポーズは、直哉を夢中で見ている鈴音には他に眼中になかった為、見られることはなかった。 だが、更に幸運なことに。 鈴音の死角で、同時に双子とロンが親指を立てて喜びを分かち合った。 ──余談で。ロンが双子に親指を立てた後、向かいに座っている直哉に同じ行為をすると、直哉は微笑んでそれに返した。 そして、その微笑に鈴音は、更に目を輝かせたのである。
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