22人が本棚に入れています
本棚に追加
風向きは追い風。
背中を押されながら海へと向かう私たち。
アスファルトの上に砂が舞い、ただでさえ悪い視界は更に見辛くなっている。
「この辺でいいかな?」
信明はアスファルトの上に花束を置き、私の手を離して合掌する。
その隣で私も、信明に倣って両手を合わせた。
悲劇から8年。
もうここに葵さんの意識が留まっていないのだとしても、きっと私たちは毎年命日になるとこの海岸を訪れるだろう。
残された者が自己満足で弔う事。
周りからはそう思われているのだとしても、私たちは誠意を込めて葵さんの冥福を祈りたいと思うから。
最初のコメントを投稿しよう!