夜の街で嘲う

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息を切らし肩で呼吸をしながらベッドの上に身体を沈める。 ふと女を見る。 無我夢中で果実を貪ったせいか、果実のものではないモノがベットリとその果実を支配していた。 まるで打ち捨てられた人形のように 力無く横たわる女。 その姿は、今にも写真に収めてしまいたいと思うほど妖艶であった。 しばらくの間その美しい姿を目に焼き付けていると 女がゆっくりと首だけをこちらに向けてきた。 「……お金……置いて、って……」 その言葉に、急に現実に戻される。 お金など、本当は五……つまりは、五万ほどしか持っていない。 食らうことに夢中になって現実などすっかり忘れてしまった。 「……」 打開策を考え、すぐにある考えが思いつく もう一度『して』しまえばいい。 そうすれば女への金をごまかして逃げても 女に追い掛ける体力など無くなっているはずだ。 そう考えて女の上に乗り 再び自身を沈めようとすると 女が信じられない動きで素早く腕を奮った。 喉元に、ひんやりとした固いものが宛がわれる。 女がこの数時間で一瞬たりとも見せなかった、歪んだ笑みを浮かべる。 女が喉元に宛がったモノをヒラヒラと見せ付ける。 小さなナイフだ。 何故そんなものが……行為の間、そんな物騒なものは目にしてなかったのだが…… 「残念ね、女側が疲れてるからって食い逃げができるとでも思ったの?」 再びピタリとナイフが喉元に宛がわれる。 背筋を伝う、いやな汗。 「……甘いわね」 女に頬を殴られる。鈍い音と共に伝わる激痛。 両手で押さえて痛みを堪えていたその隙を狙われたのか、 意識が一瞬にして失われた。
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