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「私は睦月をずっと追いかけていました。いつの間にか追い越して置き去りにしてしまったことにも気づかずに」 「そうだね。町田は君のことも好きだった。君は町田に見出された才能だった。町田は君に追い越されるなんて夢にも思っていなかったんだろう。馬鹿だよね。ライバルはそこここに潜んでいるんだ。でも町田は君を、君の才能を愛さずにはいられなかった」  ここからが本番だ。  僕はこの二人に上手く町田の思いを伝えられるだろうか。  喉が乾き、もうずいぶんと冷えてしまった番茶を喉に通した。 「京壱はあの頃、僕とずっと一緒にいてね。町田からしてみればどうして才能もない京壱が僕の横に居るのかと不満だったみたいだ。で、当時の京壱に付けた皮肉なあだ名が愛の伝道師。京壱と別れた女性は必ず次の相手と幸せになっているから、というのは建前で、お前はいつまで経っても幸せにはなれないという町田の呪い」  京壱はそれを聞いて顔を酷く顰めた。 「オレは一度も自分から伝道師だと言ったことはない。周りがそう紹介したがるんだ」 「それが呪い。チャラく聞こえるだろ。この人は私がいなくなってもすぐに違う人を愛するんだわ。だって愛の伝道師だもん。って。だから京壱の恋愛は長く続かない。ま、それも卒業みたいだけど」  京壱を見ると、彼女に聞かせたくない過去を語る僕に不満げだった。  でも続ける。  これは通らなくてはならない道だからね。  自分からは話さないだろうし、でも世理ちゃんは聞きたがるだろうし。  世理ちゃんは知りたがりだから。と町田が前に言っていた。
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