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僕は母の死を乗り越えるのに、二年掛かった。
妻に出会わなければ、きっと永遠に乗り越えられなかったのではないかと思う。
だから芹沢世理の絵画を目にする機会があった時、僕は感じた。
彼女はまだ町田睦月の死を乗り越えていないのだと。
モノクロームの太陽が彼女の代表作だった。
そうして月日は流れ、年に数回連絡が来る斑目京壱からのメールに僕は苦笑いした。
相変わらず彷徨ってる。
町田が残した『愛の伝道師』という言葉に振り回されている。
僕の過去を振り返ってみれば、京壱はいつも誰かといて、でも一人ぼっちだった。
寂しがり屋ではない。
自分の中に誰かを取り込み、溺愛したい欲望が強すぎるんだ。
誰彼かまわず取り込もうとして、探してはみるものの嵌らない。
京壱がそうなったのは、僕のせいかもしれない。
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