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 部屋の隅ある丸い藤子用の椅子を京壱の横に移動させ、僕はもう一度薄く開けられたドアに目をやった。  風に揺れているかのようにドアが前後し、意を決した世理ちゃんが顔を覗かせる。  京壱は気まずいのか鍵盤に倒れ込む。  雑に扱うなよな。 「ここにどうぞ」  世理ちゃんはおずおずと椅子に歩いてくると、浅く腰かけた。  僕はまた定位置に戻って二人を見る。  町田を介してここに集まった縁。  誰かと誰かは繋がっていたけれど、会ったことも無かった。  僕を除いては、だけど。 「町田が京壱を嫌っていたのは、女癖が悪いからではなく僕のせいだ」  唐突に切り出した僕に、京壱と世理ちゃんは同じタイミングでこちらを見る。 「町田は、僕を恋愛対象として見ていた。でも僕には藤子がいたし、何よりも僕はノーマルだ」 「ちょっと待てよ、揚羽」 「黙って聞けよ。町田が海に飛び込む前日、僕は彼を拒否した。だからアイツが死んだのは世理ちゃんのせいではない」 「……でも」 「町田の思いに僕は気付いていた。でも世理ちゃんという彼女がいたし、からかっているのかと思うようにしてた。でもアイツは本気だったんだ。自分で言うのもなんだけど才能に惹かれ合っていたんだろう」 「それ、今なら解ります、私」  世理ちゃんは呟き、両手を固く握りしめた。  その手に京壱の手が重なる。
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