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「町田が死んだのは、溺死。自殺かもしれないし、事故かもしれない。それは町田にしかわからない。ただ町田はあの日の夜、海外にいた僕に電話をくれた。僕は彼の思いを拒否した。でもそれが原因なんだと僕は思わない。帰国した時に見た手紙の消印が一週間前だったからね」 「消印?」  世理ちゃんの瞳が揺れる。  やっぱり彼女の所にも手紙が届いていたと確信する。 「そう。死ぬ一週間前の消印。ということは町田はもうその時にはそういうつもりだったんだよ」 「そんな……。私が睦月に死の色って何色だろうって聞いたのは、三日前……」 「君に死の色を教えると言うのは、町田の置き土産だろう。それと置き呪い?そんな言葉はないかな?」 「睦月の手紙には、愛を思い知れって。それはきっと死の色を教えた自分の愛を思い知れって……」  世理ちゃんは隣の京壱を見上げる。  その瞳からは涙が滔々と零れていた。  拭う京壱の手は壊れ物に触れるかのように優しかった。 「町田はせめて愛した君の中に居座り続けたかったんだろうね。そして君がこれから出会うかもしれない男性に対する敵対心。君の描く死という色は自分が示したという傲慢。君のまっさらな感性に入り込んで壊したくなった町田の嫉妬」 「止めろ、揚羽。もういい」 「思い出は思い出のまま綺麗に取って置きたいのは、僕も同じだ。でもさ、飲み込まれちゃ駄目だ。前に進まないと。同じ町田の呪縛を受けた二人が出逢ったんだ。僕は今がその時だと思うね」 「榊さん……」 「ん?」 「睦月は私を愛していたんでしょうか。私の才能を愛していたんじゃないでしょうか」 「大学の壁画」 「え?」 「僕と町田が通っていた大学の壁画を観に行けばいいよ。アイツはあれに三年費やした」 「三年……」 「人生の七分の一を費やしても描きたかったものがそこにはあるよ」
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