第1章

2/13
前へ
/22ページ
次へ
毎日が平凡で、ありきたり。 ぼんやりと俺は過ごしている。 何か取り柄があるわけでもない。運動も勉強も普通。 顔のできも普通だと思っている。 他人との付き合いが下手な俺。深い付き合いの友人は俺にはいない。いない事に、寂しいとも羨ましいと思う気持ちは毛頭無い。適当な付き合いだけでいい。 つまらない古文の授業中、俺は窓を眺めていた。 ペラペラと喋る教師。 カリカリと黒板の文字を一生懸命写すクラスメイト達。 空が青いなと眺める俺。 ああ、この空に溶けてしまいたい。 消えてしまいたい。 「麻田、外を眺めてないでマジメに授業に参加しなさい」 「…はーい」 麻田、其れが俺の名前。 麻田 宙。 教師の言葉に渋々、黒板の方へ視線を向けた。 ああ、つまらない。そう、思いながらも黒板の文字を写しはじめた。 コソッと小声で隣の山田が聞いてきた。 「麻田、何見てたんだ?」 「え、空」 「面白いか?」 「普通」 「そ、そうか」 会話は此れで終了。 ああ、消えたいな。空に。 授業が終わって直ぐに俺は屋上に向かった。合鍵持って。 ドアを開けたら、空が広がった。 弛む口元。キュッと引き締め、音がならないようそっとドアを閉めた。 「また、そこにいた」 「……宮田」 「本当、屋上好きだよな」 「普通。今日は、晴れてるし。気持ち良いし」 「そーかよ」 宮田 透。其れが、彼の名前。 宮田とは、中学からの付き合い。今で、四年目になるのかなとふと思った。 特に、親しいわけでもないけど一緒にいる事が他と比べたら多い。 其れだけ。 でも、嫌ではない。元々、他人との付き合いが苦手な俺でも無理に何かを話さなきゃと思わなくて済むから。 まあ、誰でも一緒か。 見上げた空がやはり青いな。 「予鈴、鳴ったぞ」 「うん、先行っていいよ」 「………」 横目で見れば、宮田は教室に戻る様子無い。どうやら、俺みたいにサボるようだ。 学生は勉強するのが仕事。なんて、思ってみたり。俺も、学生だけど。 授業が嫌いなわけでもない。 ただ、空が青いから。誰にも邪魔されたくないから。 だから、屋上に行きぼんやりと空を眺め昼寝をしにきた。 其れにしても、今日は本当に風が気持ちいい。 頬に触れる風が優しくて心地良い。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加