1056人が本棚に入れています
本棚に追加
/254ページ
薔薇が立てるかぐわしい香りが鼻腔を擽る。
無垢な純白のシーツを掴むアルトの指先は微かに震えていた。投げ出すようにシーツに広がるチョコレート色の髪に、オニキスのような漆黒の瞳。
夢幻を見ているような潤むアルトの瞳はまっすぐに自分に覆い被さる者の姿を映している。
白蝋のような薄く滑らかな色素の肌が開け放った窓からの月に晒され、蒼白く光り、捕食者のように獰猛とたぎるアメジストの瞳が欲を露わにする。
刹那、彼の血のような鮮明な赤い髪が波打つように蠢き出した。
「はぁ、ああん、あああーーっ」
中性的な悩ましいアルトの声が薄暗い空間に溶けていく。
擦れ合う局部から溢れる蜜液がシーツに染みを広げる。
喘ぐ口許からテラテラと零れる一筋がアルトの顎を伝うと、男は掬うようにそれを舐め、次に唇を侵した。
「――――っ」
シーツを背にするアルトが身体をぶるりと震わせる。
「アルト、もっとしてあげる……」
唇を離した男はそう言って、更に腰を進ませる。
シーツを掴む指先を長い爪がすらりと並ぶ綺麗な手で包み込むように掴み、逃げ腰になるアルトを引き戻した。
「ああっ、アドルフ……だめっ、ボク――っ」
最初のコメントを投稿しよう!