第一章

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第一章

真夏日だったある日の夜。 「あっつー…。」 リビングからペットボトルに入ったお茶を片手に、あたしは独り言を言いながら二階にある自分の部屋に入った。 部屋の西と南にある窓から、日中の温度が容赦なく部屋に残っている。 エアコンのスイッチを入れ、なんとなく部屋の窓を開けた。 生ぬるい風が頬をかすめる。 外を眺めても、真っ暗。 外灯がポツリポツリとしかない田舎。 何も不自由はない。 それしか知らない高校二年生のあたし。 …ただ一つ、気になることがある。 ウォンウォン…… …来た。 いつもこの時間。 夜11時から12時半の間。 遠くのほうから近づいてくるバイク音。 いつもコースが決まっている。 あたしの部屋がある方の道を颯爽と走り抜けていく一台のバイク。 誰にも拘束されないで走れるって気持ちいいんだろうなー…。 去年の夏からのあたしの日課。 颯爽と走り抜けていくバイクを眺めること。
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