第一章

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向かい合った状態で腕を掴んだため、あたしの顔は軽くトモの胸に当たった。 「……っと、助かったぁ~。」 あたしは呑気にため息をついてトモを見た。 トモは電車の壁に寄っ掛かっているから余裕の表情でマヌケなあたしを見て笑った。 「相変わらずどんくさ~。」 「相変わらず口悪…。」 「うるせー。」 悪態つき合う私達。 降車駅に着いて、コンビニで適当にお昼ご飯を買ってトモの家に向かった。 電車の中で同じ中学だった友達に連絡してみたけど、結局誰もつかまらなった。 ……トモと二人。 それは、卒業式のあの日以来。 いや、いやいやいや。 トモのこと男として見るとか…ない。 っていうか、なかった。 「何?黙り込んだまま。」 トモの声にハッとした。 「あー、お腹減ったなーと思って。 あと、さっき買ったアイスが溶けそうで心配!」 思ってもないこともないが、やたら早口になってしまった。 「あはは!食いもんのことばっかだな。」 「暑い。お腹減った。疲れた。」 色気も何もない言葉。 まぁ、どうせトモだし。 あたしはトモの中身が変わってないことに安心して、中学の時に戻った気になった。
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