第一章

11/23
前へ
/201ページ
次へ
「お邪魔しまーす。」 トモの家には誰もいなかった。 だからといって黙って家に入るのは気が引けて、一応挨拶してから入った。 「アイス冷蔵庫に入れてくるから先に部屋行ってて。」 あたしは少し柔らかくなったであろうアイスをトモに渡して、二階にある部屋に上がった。 久しぶりに入るトモの部屋。 ココナッツのお香の香りは、トモの部屋に来たって感じがする。 …あ、香水はずっとコレなんだ。 トモが高校に入ってからずっと使っている、縦長のマットなビンにシルバーの光沢のある蓋の香水。 初めてトモがそれをつけていた時、ちょっとドキッとしたなぁ。 なんか、トモだけ急に大人になったように見えた。 そして、少し遠くなったように思えた。 …もう慣れたけど。 あたしが学習机の上にある香水をマジマジ見ていると、一冊の雑誌が目についた。 バイク100選。 へー意外。 トモがこんな雑誌……。 「物色し過ぎ。」 「わっ!」 トモの声にあたしは跳び跳ねた。 「つーか暑い。エアコンくらいつけろよ。」 トモはそう言いながらエアコンのリモコンを操作した。 「あ、あぁ…そうだね…って。 足音も立てずに来るからビックリするじゃん!」 あたしは雑誌を手にしたまま、ソファに座った。
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加