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「お邪魔しまーす。」
トモの家には誰もいなかった。
だからといって黙って家に入るのは気が引けて、一応挨拶してから入った。
「アイス冷蔵庫に入れてくるから先に部屋行ってて。」
あたしは少し柔らかくなったであろうアイスをトモに渡して、二階にある部屋に上がった。
久しぶりに入るトモの部屋。
ココナッツのお香の香りは、トモの部屋に来たって感じがする。
…あ、香水はずっとコレなんだ。
トモが高校に入ってからずっと使っている、縦長のマットなビンにシルバーの光沢のある蓋の香水。
初めてトモがそれをつけていた時、ちょっとドキッとしたなぁ。
なんか、トモだけ急に大人になったように見えた。
そして、少し遠くなったように思えた。
…もう慣れたけど。
あたしが学習机の上にある香水をマジマジ見ていると、一冊の雑誌が目についた。
バイク100選。
へー意外。
トモがこんな雑誌……。
「物色し過ぎ。」
「わっ!」
トモの声にあたしは跳び跳ねた。
「つーか暑い。エアコンくらいつけろよ。」
トモはそう言いながらエアコンのリモコンを操作した。
「あ、あぁ…そうだね…って。
足音も立てずに来るからビックリするじゃん!」
あたしは雑誌を手にしたまま、ソファに座った。
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