第一章

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「地区大会さ、涼が見に来るんだ~。」 そう言って、春菜はため息をついた。 彼女の大会を見に来る彼氏……。 少女漫画のような展開、少し憧れる。 でも春菜は浮かない顔をしている。 「そのため息は何?涼くんが来るなら頑張れるじゃん!」 「だってなんか…負けられない気がしない? だいたいうちの部は緩いし弱小だし……。」 ブツブツ言う春菜。 春菜は中学の時に結構厳しい部にいたから、今の部は少し物足りないらしい。 「勝ち負け関係なしに春菜の部活姿見たいんだよ~。 それにシングルスだし、いいとこ見せられるんじゃない?」 「そうかなー。 でさ、試合の時もしかしたら……」 がんばれ春菜~!とか声援浴びちゃったりするのかな。 …なんか…いいなぁ。 「ちょっと優衣、聞いてる?」 あたしが色々想像していると、春菜が肩を叩いた。 「あ、ごめん聞いてなかった。」 あたしが春菜に顔をむけると、 「…優衣って、都合の悪いことは、耳に入らないわけ?」 って、春菜があきれた顔をしていた。 「それひどくない?ただ涼くんと春菜の試合中のこと考えてたんだけど。」 「げっ。何それ!」 「がんばれ~とか、声援浴びるのかなぁとか♪」 「わわわ!やめて~それ恥ずかしい!」 「あはは!」 春菜をからかっていると、先輩が次のメニューに入ろうとしていた。 「さ!もうちょっと頑張ろ!」 先輩達に助けられたと言わんばかりの春菜の様子に、あたしはまた笑った。
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