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象と牛の足跡を目前にしながら眉間女は金切声して前進を止めさせた。
この地面は滅びの匂いがする、
彼方まで一本の木もない、
沼だらけ、
悪い水、
松の洞穴まで引き返せ。
弟の力男が憤った。
新しい糞だ、
太陽が沈まぬようになって月の満ち欠け一巡、
命躍る季節、
行かずどうする、
戻って首狩族と延々争うのか。
最年長の馬男は娘の眉間女を守る。
引き返そう、
入日山稜ならまだ鹿の群れも多い、
いずれ居を移すべきは彼方、
と逆方向を示す。
いいや、
労多くして鹿の一頭より象牛の一頭だ、
それにもし首狩族が先にこっちへ来れば入日山稜の鼠族との間でおれら息ができない。
おれは行く、
どうしても行く、
皆聞け、
おれと行く者は誰だ。
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