白い道

4/6
前へ
/6ページ
次へ
 氷河期の三万六千年前から数千年の間シベリアとアラスカ間の海底は露わな陸地であった。 ベリンギア。 狡猾な肉食獣ヒト、 力男達はアラスカの地に年数を経、 ヒトを知らぬ大型獣を思うさま罠に落とした。  ある晴れた夏、 力男は息子の耳児と並んでバイソン包囲の一角にあった。 ふと十歩ほど向こうの繁みから雷鳥が首を伸ばし気取った様子で歩き始める。 それを頭を浮かせた蛇が追う。 雷鳥は繁みから繁みへ伝い歩き、 蛇がいざひと跳びに襲う距離に至って空にはばたいた。 はじめは雛と卵を狙った蛇であったが巣からも遠ざかり間抜けに方途を失う。 しかし雷鳥は人と蛇の違いを知らない。 翌日耳児が気取って歩き始めた雷鳥を見て巣を知り卵を集めた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加