第六章

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◇◇◇ 「本当か!?」 「本当や!はよ!」 お琴が土方を呼びに来ていた。 玲が怪我して帰ってきたことを伝えると明らかな動揺を見せた。 噴かしていた煙管も煙草盆の上に置き、お琴のあとについて玲の部屋へと向かった。 玲が…… 何をされた? 誰にあった? そんなことは滅多にないだろ。 それに帰ってきた山崎も傷だらけだった。 「玲!!」 「しーっ!……今、寝たとこなの。」 土方が勢いよく襖を開けると藤堂が口の前に一本指を立て、静かにするよう言った。 「悪い、悪い…。で、どうなんだ?」 「なんていうか…脇腹と左肩を負傷。どっちも傷は浅いから大丈夫だけど、血を流しすぎたね。」 土方は畳を殴り付けた。 鈍い音がして土方の拳は赤くなっていた。 今は穏やかな顔をして寝ているものの、帰ってきたばかりの時なんて痛みに顔を歪め、此処まで走ってきたことが不思議に思えた。
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