第1章

2/3
前へ
/3ページ
次へ
 落語に『三方一両損』という噺が御座います。  本題では無いのでサラリと流しますと、左官職人の 金太郎さんが土手で財布を、拾ったところ中身は三両の金。 その他にも書き付け等、見ると神田大工町の吉五郎とある。  そこで届けると、吉五郎さんは書き付け等は大事だが 金の方は俺と居るのが嫌で、勝手に出て行った。として 受け取らずに、拾った金太郎さんのモノだから持って行けと。  とはいえ金太郎さんも江戸っ子職人。金が欲しくて 届けにきたわけじゃあねえと、啖呵をきって双方ケンカに。 金の奪い合いではなく、押し付け合いなので埒が明きません。  遂には双方の大家さんまで、巻き込んでお奉行所へ。  ここで有名な大岡越前守が、互いの言い分を聞きお裁き。 「金太郎、吉五郎、お互い正直者につき二両の褒美を遣わす 両名は、これを受け取ってくれるか?」という。  意味の解らない二人にお奉行様は、こう説明した。 「この度のケンカの理由である三両がある。これを どちらも受け取らない。そこで奉行が一両を足す。 金太郎は正直に届け三両もらえる所が、ニ両になる。 吉五郎は自分の金、三両が戻るはずが、ニ両になる。 そして私、奉行が一両足したので、三人が一両づつ 損をしたという事で、丸く納めようではないか。」  そして最後にサゲ(オチ)で締め括る。この噺のオチは  いえ、よしましょう。 **********************  さて、明治24年。シベリア鉄道の式典の為に ロシア帝国のニコライ皇太子が、来日する事になります。 ところが奇妙な噂が流れたわけです。 「西南戦争で死んだはずの西郷隆盛がロシア帝国へ 逃げ延びて、ニコライ皇太子と共に帰国するらしい。」  この噂を信じて西南戦争で西郷隆盛達と戦って 勲章も受けた津田三蔵は、噂を聴いた当時に滋賀警察部巡査。  ニコライ皇太子は、ギリシャ王子ゲオルギオスとそれぞれ 人力車に乗って、京都から琵琶湖を観光に行った。 滋賀県庁で昼食をとった。理想的な昼下がり、人力車に乗る。  警備を担当していた滋賀県警察部から、突然、 サーベルを引き抜いて皇太子に斬りかかった。  世にいう「津田事件」です。 *********************  さて、三人の英雄が登場します。  向畑治三郎(むかいばた・じざぶろう)による話。  その時はまずビックリして、一瞬は動けなかったんですわ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加