第1章 悪夢

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少女は頬を膨らまして軽く睨みをきかせた。 「悪りぃ、あまりに可笑しくってさ!」 和真は腹を抱えて笑いながら言うと、再び扉に手を掛けた。 しかし、その手をまたしても彼女は止める。 「何だよ、まだ用かよ?」 「しっ、誰か来る……」 少女は人差し指を口元に立てて小さな声で呟く。 そう言えばと、和真は扉に耳をあてる。 タッタッタ…… 此方に誰かが走ってくる足音がした。 (こんな時間に、誰だ?) まぁ、俺らも同じだが。 そう思いながら扉の前に少女と身を潜める和真。 ガタガタっ その直後、図書室の扉が強く揺れる。 当然だが窓は開いていない。 風だって、こんな真夏には殆ど吹かない。 暫くし、足音と揺れは止んだ。 「よし、そろそろ行くか?」 俺は安全を確認し、少女に声を掛けようと振り返る。 だが、彼女の姿は何処にも無かった。 (あれっ、あいつ。何処行った?) 消えた少女、先程まで確かに目の前に居た。 音が聞こえなくなると同時彼女は姿を消していた。 「何だよ、まさか。幽霊だったのか?」 あれが幽霊だとしても全く怖くない。
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