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兎に角、担任が来る前に教室に着こうと俺は走る。
道中、息が切れそうになるが呼吸を整えて何とか頑張る。
「たくっ、まじ面倒いよなぁ」
寝不足でだいぶ体力が疲労していた。
ここは結構な通学路だが、生徒は一人も見当たらない。
恐らく皆はとうに、教室に着いているのだろう。
「っ、可笑しい。人が見当たらない……」
何時もなら近所で吠える犬の鳴き声がするはずが、今日は犬の姿さえ無い。
やけに静寂過ぎる。
「あっ、君。昨日の?」
訝しげに辺りを見回していると、少女が話し書けてきた。
和真は嫌々そちらを向く。
もう逃げようかと、足を早める。
「ちょっと、昨日は私を置いて行ったでしょ!」
少女が可笑しな事を言い出す。
「はっ?お前が勝手に居なくなったんだろ」
和真は馬鹿にされたと思い、苛つきながら言い返す。
しかし彼女は、首を傾げながら知らないと言ってきた。
「本当か、なら何で急に消えたんだよ?」
「気が付いたら、この場所に居たの。けど何か周りが少し昔みたいで……」
少女は見苦しい言い訳を並べる。
だが表情からして、嘘を言っている風には見えない。
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