第1章

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退屈な日常の最中で、電車に揺られながら僕は思い返していた。あの頃の僕はどこか期待していたんだと思う。何かが勝手に変わってくれることを。 僕、本山純一は、大学受験の受験勉強に勤しむ高校2年生だ。自分が周りと違うところを強いてあげるなら、将来のことで悩んでいることだと思う。自分が何を望んでいるのか、何をしたいのかが皆目見当もついていない、ということは普通だが、そこで悩むのは少し異常だとは自分でも思っている。普通の受験生なら「あ?天職?大学に入ってから探せばよくね?」と答えるだろう。 無闇に探そうとしても無理だとわかっているのに、何故か僕の心は相変わらず焦燥感で暴れている。 昔から自分がしたいことをしていたら、いつの間にか人と関わる機会がなくなっていた気がする。いつも僕の傍らには電子辞書や小説があり、小さい頃から自分が知りたいことを自由奔放に調べる習慣がついていたせいだろうか。 人との関わりがほとんどなければ、当然高校2年生にして友情がどんなに素晴らしいものか、恋がどのようなものなのかということを身を以て経験したことがなかった。知りたい、とは思う。だけれど、何かが違う気がする、その違和感を解消するためには青春するしかない、そんな堂々巡りのなか遂に僕は受験勉強に追われる日々へと突入していってしまった。
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