第1章

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僕の家は本来なら隣の県の田舎にあるのだが、高校生にもなると学校が終わるのが遅かったりするので、親が気を使ってなるべく近いほうに下宿先を用意してくれたのだ。お陰さまでここ一年間ものすごく通学が楽になったけれど、やはり帰ってきても物音が1つもしない家というのは少し寂しい。 まあ余談だが、親が僕に一人暮らしを勧めさせることの後押しになったのは、彼女おろか友達すら作ろうとしていなかった僕の姿を見ていたからだろう。 そんなわけで僕は一人暮らしをしている。 昨日のショッキングな出来事から今朝目覚めのシャワーを浴びてようやく立ち直り、学校へ行く準備をした。 といっても学校に必要な勉強道具などはバッグのなかに入っており、塾で暇潰しに自習する時や塾の講師に授業を受ける時ぐらいしか学校外で中身を開けないので、ぶっちゃけ寝癖を整えてたり制服を着たりするぐらいだけどな。 そうこうして朝の結構早い電車に乗ったんだが… 「おっはよー」 …なんでコイツと鉢合わせるんだ?昨日の時点でもう付きまといフラグが建っちゃったのか? 「いままで会わなかったのになんで今日はばったり会ったんだ?」 「うーん、朝早く起きて、ぼーっとしてたら、神からの『今家を出なさい』という御告げが聞こえてさ」 …コイツって人間なのかな?寒気がしてきた。むしろ鳥肌立ちすぎて毛がスポスポ抜けちゃいそう。 「…お前がちょっと異常なのはわかった。昨日渡してきた本についても含めてな。」 「あ、読んだんだ、どうだった?」 「『どうだった?』じゃねえよ!!なんちゅうもん渡してきてくれてるんだ!俺の価値観崩壊しまくりだろ!」 「チッ…引っ掛からなかったか…現実版が見れると思ったのに…」 「ナニイッテルカヨクワカラナイ。貞操の危険を感じるのでどっか行ってください。」 「あはははは、冗談だよ、からかってみたかったんだ。」 「からかいたいって理由だけならなんで持ってるんだよ…」 「え?誰かの忘れ物だけど?」 「駅員に届けろよ!俺に渡してるんじゃないわ!」 「お~、今日はツッコミが絶好調ですねぇ~。別に1日ぐらい届けるの遅れてもよくない?」 「…まぁそれもそうか」
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