第1章

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 いつワシら悪ガキが行っても笑顔で、遊んでよいと言って お菓子も下さったりしたが、マイトがいなくても申し訳ない。 そういっていたよ。  どうぞ、主よ罪深き猫一匹をも救えぬ至らぬ身で説法に立つ 私をお赦し下さい。そう口癖のように嘆いていたそうだ。  祖父はパイプを詰め替えて火をつけ直したので、私は母から 珈琲とホットミルクをもらい、珈琲を祖父に渡した。 祖父はありがとう。といってから、一口飲んで。  こういう濃い珈琲だったのだ。と急に言った。  何が?と普通に訊くと、祖父の話は昔話に戻った。  マイトが居なくなって、十年以上は過ぎた頃だと思う。 ワシももう大学を出て、仕事を継がなくてはと忙しかった。 我が家は大工だから、子供の頃から親父。ああ、つまりお前には 曾お爺ちゃんになるなぁ。立派な棟梁で尊敬されておった。  全部知ってる。私も大工に憧れた。家や教会、学校を建てたり 凄い魔法みたいだと思っていた。ボロボロになっても 神父様は教会に居られたので、立て直したかった。 だが金なかったのだ。  ワシは鼻タレ小僧の頃から、棟梁に厳しく丁寧に習った。 たとえ親父でも仕事場に入ったら、棟梁と呼ばなくてはいかん。 だが、親父に戻るとワシに学業を優先させてくれた。 高校も、大学も楽しかったし、スポーツも楽しかった。 そのおかげでワシは、多くの事を学び石工の事も少し学べた。  私の父と同じだ。もちろん祖父も同じだけど。  だがなワシは大工になる為に、大学では建築の事を勉強して 家に一度戻ってから、進路について話し合っていた、 設計士も石工も興味があったし、大工は認めて貰いたかった。  ある日から何日かの間の事だったが。  凄い嵐のような、雨と風の強い日が続きおった。雷も鳴る。 だがあの夜、神父様が突然、我が家をお訪ねになったので 使いを下されば、こちらから行きましたものを、一体なにが? 皆、神父様を暖炉で暖まって頂き、訳を訊いたのだが。  神父様は大変、いい難そうだったが意を決してから 棟梁と未熟なワシに頼んだのじゃ。  実は三日前に山向こうの離れた村には、教会がないので こちらの村まで山を越えて、葬儀を私に頼みに来たのです。 無論、断る理由などありませんから、すぐに山を越えて 喪にふくしている家を訪ねました。大層、立派なお屋敷で 隣山に伐採場を持っているのだとか。
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