その1 再び蘇るかませ

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「なあ遠世…お前いつの間に流暢に話せるようになったんだ?」 無言に堪えられそうになかったので遠世に聞いてみた。 確かこいつは前にあった時にはまだ普通に話せなかったはずだ。 夏休み中何かあったのだろうか。 「それは…」 遠世は困ったような表情になる。 一体どうしたのだろうか。 朝起きたら急に話せるようになったとか? 「まぁ言えないのならいいけどな それよりどうして学校に来ようと思ったんだ?」 「いや…私もまだまだ現役の高校生だからね? 行けるようになったんだからそりゃ行くに決まってるでしょ」 おぉ…急に元気になった。 顔をぐいと近づけ、不満げな顔をしている。 いや、別に老けているわけでも忘れてたわけでもねえから。 今まで引きこもってたくせに勉強は大丈夫なのだろうか。 「ねえ親友…じゃないや木崎君」 俺が脳内で弁解していると遠世が改まって俺を名字で呼んできた。 そういえばなんで俺親友って呼ばれてたんだっけ? その前は今みたいに苗字呼びだったよな。 「なんだそんな真面目そうな顔して… 学校に行けて嬉しかったのか?」 「うん、まあそれもあるけどさ…」 「どうした? 何か言いづらいことでもあるのか?」 遠世はなんか知らんが言い淀んでいる。 チャックはちゃんと閉まってるから大丈夫なはずだが…? 「あのね木崎君、実は謝りたいことがあって…」 「…なんだ?」 なるほど…このために二人っきりになれるよう裕也に言ってたんだな。 そうじゃなきゃ裕也が俺を帰すわけないし。 「前に会った時は上手く話せなかったから今言うけれど、私のせいで木崎君に辛い思いさせちゃったんだよね?」 「・・・・・・」 「…私がいなくなってから銘葉も春上さんも草川さんもひどい目にあっちゃったのも私のせいなんだよね?」 「いや、それは違うぞ」
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