その1 再び蘇るかませ

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「ふぅ…おなか一杯になったわ ありがとうな」 「それで? 絢じゃなくてわたしの家に来たのはどうしてなのかしら?」 そう言って目の前の小さい子は俺をジロッと睨む。 こいつは隣のクラスの小さい子代表の大葉鳴だ。 俺と同じ部活に所属しているが、幽霊部員だ。 というかまともに出席しているのは俺くらいだと思うあの部。 どうやら鳴は俺の交渉術に不満があったらしい。 え、それはどんなものなのかって? 『あら、どうしたの木崎?』 インターフォンを押して出てきた鳴に 『え、ご飯を食べさせてくれって? 嫌よ! 何でアンタなんかに』 何か言っているが関係ない。押し入る。 『え、ちょっ…止まりなさいよ! え、くれるの…なにこれ? 850円?』 何か言われたらお金を押し付ける。 『………………待ってなさい』 割と守銭奴な鳴ならこれで大丈夫だ。 因みに今日はカレーだったので新たに俺の分を作る必要はなかった。 因みに鳴の前に絢の家にも行ったのだ。 ただ… 「絢に同じことしようとしたら家に男連れてきてたからやめた」 「え!? 黒井がいたの?」 『その話詳しく』と身を乗り出して続きを促してくる。 裕也だったら裕也というんだが… 「いや、別人だった 当然父親や兄弟というわけでもないぞ」 「う…あの人のことは話さないでほしいわね 違うというからには顔見たんでしょうね?」 渋面を作る鳴。 何故かと言われれば、昔鳴を乗せた車が大きな事故を起こした時の運転手が絢の父親だったのだ。 鳴は助かったが、鳴の弟と運転手は亡くなった。まぁ他にも轢かれて亡くなった人もいたらしいが… 鳴の問いに『もちろん』と頷く。 俺を驚いた表情で見ていた顔はしっかりと見てきた。 あれは… 「天音だったぞ なんか仲良さそうに話してた」 「………は?」 俺の言葉に固まる鳴。 天音は鳴が転入前に通ってた学校の先輩だ。 知り合いが出てくるとは思わなかったのか、女の子がすべきでない表情になっている。 ・・・はっきり言うと間抜け面をしていた。
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