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「・・・というわけだ 後は分かるだろ? あいつは再度引っ越しするまで本当に男のふりをして俺と付き合っていた」
それも俺が当初望んでいた通り、裕也がいないときだけの付き合いだ。
流石にそれだけではかわいそうだと思ったので、たまに真奈と遊んでもらっていた。
俺の話を聞いた二人は呆れてものもいえないらしい。
鳴はやや怒っているようにも見える。
「・・・申し訳ないと思ってる 実際よく会って遊んでいたはずの真奈が分からなかったのは俺の望みを聞いて男のふりを徹底していたからだろうな」
「それで? あんたがその子を信じられる理由はまだあるんでしょ?」
結局それ以上追及するつもりはないようで、次に行くよう催促する。
そう。理由はまだあるのだ。
「もう一つは・・・一度俺の心を救ってくれたからだな」
「ふうん それはわたしと会う前かしら?」
鳴の言葉に首を横に振る。
恐らく自分と会ってからそんなに劇的な変化があったようには見えなかったからだろう。
「いいや 割と最近のことだ」
「・・・最近会ったんだ 木崎に一体何があったんだ?」
天音が訝しげに言う。
俺がそんな状況に陥るとは思えなかったのだろう。
全く・・・俺を何だと思っているのか。
「俺が遠世に会って混乱していたときのころだ」
俺は遠世が自殺してしまったと思い、その報復に審問部員に遠世をいじめて犯罪を犯した奴らを本当にひどい目に合わせた。
だが彼女が生きていたのならそこまですることはなかったのではないか、俺は結局あいつらと同じ”もの”ではないのかと悩んでいた時だった。
ふとどこからともなく現れて、話を聞いてくれて慰めてくれた。
それだけかもしれないが、それだけで俺の心はわずかではあるが救われたのだ。
単純かもしれないが、あの時あいつがいてくれたからこそ俺はすぐ立ち直ることができたのだ。
「・・・まあ、今となっては思うけどな」
「何をよ?」
話し終えて、改めて天音の話を思い返すとある一つの懸念が浮かび上がる。
”いくらなんでも都合がいい”とだ。
俺が友人を探していた時に現れ友人になり、俺の懺悔を聞いてほしいときに現れ話を聞いてくれる。
そして真奈があの時代にいたことを驚きもせず受け止めていたことからして・・・
「未来予知かもしくは心を読む能力者だとでも思った?」
鳴ではない女の声が聞こえた。
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