13人が本棚に入れています
本棚に追加
声の方向に振り向くと、いつの間にか近くに女の子が立っていた。
・・・笹倉だ。
彼女は以前会った時に着ていた見慣れない制服ではなく、白いよく分からん服を着ている。なんかお嬢様っぽいな。
いきなりの登場に天音と鳴が固まり、辺りに緊張感が増す。
・・・といっても俺はそうでもないが。
「前に会った時は挨拶できなくてごめんね、真一兄ちゃん」
「いやいや こっちこそ悪かったな 何も言わず付き合ってくれて嬉しかったぞ」
「ふふっ ここにいるってことはそっちの天音さんか真奈ちゃんから話を聞いてここに来たんだね? もう、遅いよ!」
「悪いな 俺にも色々理由があるんだよ」
笹倉は二人の空気には触れずただ明るく微笑んでいる。
怖い・・・とは思えないんだな、残念ながら。
「・・・帰ってきてたんだな」
あの時はたまたまここを訪れていたのかと思っていた。
俺自身住んでいたことは知っているのだが、今また住んでいるとは思わなかったのだ。
内心すごく驚いていたりする。
「うん、つい先週ね ねえ、せっかくだから家に招待するよ! 二人もきてもらっていいよ」
「「・・・・・・」」
二人は彼女を驚愕の目で見つめている。
・・・恐らくそれはすぐに怒りに変わるだろう。
そうなる前にも
「すまん ちょっと二人は帰ってもらっていいか?」
俺はそう切り出す。
二人はそこまで愚かではない。
こんな状況下でも理解してくれるだろう。
「・・・大丈夫なの、この人?」
鳴がどこか心配そうに言う。
殺人に加担していたかもしれない人間と二人で会うのだ。
気持ちは分かるかもしれない。
だが、何度も言う通り俺は彼女を信じたい。
・・・もしかしたらそう思わせているのかもしれない気がするがだ。
二人は納得・・・はしないでも頷いてその場を去って行った。
『後はしっかり頼んだ』と天音にきつく言われているので、何もありませんでしたなんて許されないだろう。
かつてあったらしいあの事件について本人の口からしっかりと状況を説明してもらうつもりだ。
笹倉はそうなることが分かっていたかのように、二人に手を振ると俺を家に案内した。
さて、鬼と出るか蛇と出るか・・・
俺が信じる笹倉であってほしい
そう願わずにはいられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!