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「なんだ、夢か」
御南斗は不思議な夢で目を覚ました。寝起きは良好とは言えない。血まみれの少女が夢の中に現れたのだ。それで気分がいいはずがない。
「それにしても……」
妙にリアルというか、かなりの現実感を帯びていたというか、「夢だから」の一言で処理してしまっていいのか迷ってしまうほど鮮明な映像と体験だった。
「まぁ、深く考えたところでな」
モヤモヤした気持ちを払う意味も含めて、彼がベッドと決別しようとしたときだった。
「あ?」
モゾモゾと、布団がの生き物のように蠢いたのだ。
しかも脛の辺りが妙に温かい。まるで人肌のような温かさだ。
「…………」
「怖いもの見たさ」という言葉がある。人は正体不明のものに対して異常なまでの関心と興味を持つ。何が潜んでいるのか分からないからこそ、未知が待ち受けているからこそ、真実を知りたいからこそ、見てみたい欲求が彼に布団を剥がさせた。
「!?」
そこには、肌着を一糸纏わぬ少女が小鳥のさえずりのような寝息を立てて眠っていた。雪のように白い肌に、対照的な漆黒の長髪。
芸術品とも形容出来うるほど端整な顔立ちと肢体を目の当たりにして、御南斗はドキッ! と、胸の中で高鳴るものを感じた。
しかしそれは、残念ながら恋心という華やかなものではない。
御南斗はこの少女に見覚えがあった。いや、もしかしたら見覚えがあったでは済まないのかもしれない。
つい先刻、顔合わせしたばかりなのだから。
――そう、夢の中で。
「ぅ、ぅん……」
外気に触れたせいか彼に気が付いたせいか、少女が眠そうに目を開ける。
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