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「あ、おはようー」
眠気を吹き飛ばす勢いで少女は挨拶を済ませるなり、一直線に彼に抱きついた。
裸体でだ。
「昨晩は助けてくれてありがとう!」
「――ッ――!?」
とてつもなくスベスベした肌が密着して温もりが伝わって息が触れ、女性経験皆無な御南斗は声にならない叫びを上げた。
◇
「はい、朝ご飯のオムライス」
「いゃった!」
落ち着くためと、話し合いの場所として居間を設けた。つい数十分前まで“あんなこと”があったため、御南斗としてはこうして二人で同じ空間にいるのは些か抵抗があった。
少女の方はどうかと訊かれれば問題なし。無我夢中にオムライスを頬張っている。
「あのさ、朝ご飯を食べてるところ悪いんだけどさ」
今となっては彼一人となってしまったが、この家の住人は元々四人。彼と姉と母と父。女性物の服の品揃えは抜群とまではいかないものの、必要最低限の量は残っている。彼女にはサイズがピッタリな姉の部屋着を着用してもらった。
「なぁにー?」
「さっきの話もう一度訊かせてくれるかな。その、俺と君が会った場面」
彼女は御南斗のベッドに潜り込んでいた。つまり、そこに至るまでの過程があるということ。朝起きたら異性と裸でベッドで過ごしていた結果の経緯なんてそう多くない。もしかしたら学生の身でありながら一晩の過ちを犯してしまったかもしれないのだから。
「だから、あなたが昨夜にわたしを助けてくれたの。死にかけてたわたしの命をあなたが繋ぎ止めてくれたの」
「それは本当なんだよね!? 嘘じゃないよね!?」
「本当だってばー」
この証言で彼は一安心する。
「(そっか、あれが正夢ってやつか)」
でも厄介なことにもう一つの疑問が生じた。
どのようにして彼女を救い出したかだ。
彼女の話を辿ると、目を覚ましたときにはもう死ぬ一歩手前だったらしい。
それ以前の記憶がないのでそれが事故的なものか人為的なものかは知る由もない。
「ちょ、ちょっと待って。一回話を整理させて。確かに俺は君のことを助けたんだよね」
「だからそうだってばー」
「あれ、おかしいな……」
保健体育の授業の一環として人工呼吸だの心臓マッサージだのの応急処置程度ならば心得ているのだが、生死の狭間から人の命を救うまでの大層な技術なんて学んでいない。
「あなたは何もしてないよ。あなたがしてくれたのはリンクの接続だけ」
「……は?」
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