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「生体リンクだよ? エンジェル・リフトの生体リンク」
「ごめんなさい。ちょっと真面目に何言ってるか分からないです」
「えぇ!? じゃあ、う?ん。なんて説明したらいいのかな……」
彼女は顎に手を添えて、頭を小さく横へ倒す。
「――ねぇ、十七年前のことは知ってる?」
「そりゃあ、知ってるけど」
彼が「覚えてる」ではなく「知っている」と答えたのは、これから語る昔話の経験者ではないから。
「でも、それと何の関係が」
「うん。まずはそこから話さないといけないからさ」
十七年前。御南斗が生まれた年。日本では世界に類を見ない超常現象が発生した。何の前触れもなく空に亀裂が入り四足の獣と六枚羽の天使が落下してきたのだ。
天使に意識はなかったが、獣は違った。姿勢を正すと同時、鬱憤を晴らすかの如く暴れだした。
咆哮一つでビルは崩落。
爪の一振りで生き物は真っ二つに断裁。
牙は硬度なんてものを無視して差別なく噛み砕いた。
そんなバケモノを野放しにするはずもなく、自衛隊が立ち上がったものの、いかなる強力な兵器を以ってしても傷一つどころか怯ませることすら叶わなかった。
そして最後は抵抗空しく全滅した。
人々が意気消沈してからも、獣はますます殺戮と破壊と暴虐の限りを尽くした。
だが悪夢はいつかは過ぎ去るもので、この大惨事にも終末が訪れた。
倒れていた天使が意識を取り戻し、獣を殺したのだ。
それは相打ちだった。
天使の不意の一撃に獣は即座に反応。死してなお、最後の抵抗として三本ある角で天使を貫いた。
これで何もかも終わりを告げた。誰もがそう勘違いしていた。
これはまだ序章でしかなかった。
それから数年の月日を経、大災害の傷跡も癒えた頃、再び獣が出現した。天使はすでにいない。獣に対抗出来うる手段を人類は持ち合わせていない。
なす術なく蹂躙されると誰もが予見したとき、颯爽としてヒーローは登場した。
それが魔法少女、殺気院峰(さつきいん みね)。
彼女はいともたやすく獣を駆逐した。
国民は政府が投入した救世主に、彼女のあまりの強さに、美しさに、格好良さに、勇ましさに、凛々しさに歓喜し、熱狂した。
その日からが始まりだった。獣がときおり空から降ってくるようになったのは。
「長かったな」
「ちょ、ちゃんと聞いてた!?」
前置きはここまでにして本題へと戻る。
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