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そこで役割分担という手段を用いた。単独で魔法少女に変身するプロセスを止め、一人に天使の力のコントロールを一任して、パートナーに力を分け与える方法に変えた。
天使の因子を受け継ぎ、天使の力を一任されているものをエンジェル・リフトと呼ぶ。
そして、
「わたしがそのエンジェル・リフト」
ここで話は振り出しに戻る。御南斗がどうやって彼女の命を繋ぎ止めたかについて。
「あなたはわたしとリンクを繋いでわたしを助けてくれたの」
生体リンク。それはエンジェル・リフトのみに許された信頼の形・パートナーの証。会話を交わさない意思疎通や感情の譲渡、生命の共有など、リンクを結んだ者同士は文字通り一心同体となる。
「あなたが死ななければわたしは死なないし、わたしが死ななければあなたは死なない」
ここまでの説明を受けて、御南斗は腹を抱えて盛大に笑った。
「ちょ、何で笑うの!?」
「え、いや、だって、あまりにも良く出来た作り話だなぁって」
「作り話じゃないし!」
あまりにも失礼な態度を取る御南斗に、彼女の堪忍袋の緒が切れたようで、
「ようし分かった! なら証拠を見せてやる! それなら信じるでしょ!」
「あぁ、うん、いいよ。何でも信じてあげるよ」
彼女は服を捲り上げたと思うと、御南斗の腕を掴むなり胸まで潜り込ませた。
下着を嫌がったので着けさせてはいない。サラサラの地肌だった。
「!?」
御南斗は腕を引っ込めようとするも、彼女がそれを阻止する。
「ちょ、何やってるはな――」
「聞こえる? 心臓の音」
静かだった。肉を隔てた彼女の心臓から命の鼓動が伝わって来ないのが分かる。
「わたし、心臓がないの。でも、それでも生きていられるのはあなたのお陰。ねぇ、これでもまだ信じられない?」
「……わ、わかったよ!」
ボソッと、御南斗は呟く。
「ん?」
「分かったから! 信じるから!」
この場合、決定的な証拠を突き付けられてそう口にしたというよりも、逃げたい一心で口走ったと説明した方が正しい。
「だからさっさと離せ!」
「え? もっと触ってもいいんだよ?」
「何言ってんだお前!?」
◇
登校した御南斗が自分の席に着いて初めてしたことは溜め息だった。
「ん? どうした御南斗。いつにもなくため息なんかついて。お前らしくないぞ」
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