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彼の救難信号をキャッチしたのは同級生の神夜神(かみや じん)。ビジュアルは端的に述べるなら超が付くほどのイケメン。友達であることが誇らしく思えるくらい。
そのあまりの人気ぶりに校内にファンクラブが設立されたことを本人は知っていながら、そのことをまったく鼻にかけず、男の友情を何より大切にしてくれるという人格者である。
「あぁ、ちょっとな。とある事情で家族が増えてさ」
時間は約三十分前に遡る。
「君がそのエンジェル・リフトっていうのは分かった。でさ、それも踏まえてこれから警察呼んでいい?」
「警察!? なんで!?」
御南斗の唐突な発言が彼女の度肝を抜いた。確かに、彼女の視点からすれば何も悪いことをしてないのに警察を呼ばれるのは理不尽である。
「話をまとめるとさ、君は政府が造った生物兵器みたいなもので、ようは政府の所有物なんでしょ? なら警察に身柄を引き渡すのが正解じゃないか」
まぁ、もっとも、そのエンジェル・リフトが人型でなければここまで話を訊いていなかったのだが。
「嫌だ嫌だここにいる! わたしはここに住むの!」
「住むったってなぁ……」
「……いいの? 警察なんか呼んで」
彼女は何かよからぬことを企んでいる表情をしていた。
「おい待てそれはどういうことだ」
「もし御南斗が警察を呼んだりしたら、わたしは警察に助けを請います」
「!?」
彼女はその幼稚な言動とは裏腹にかなりの腹黒タイプのようだ。女の子という特権を最大限に悪用してきた。電車で女子高生に「この人痴漢です!」と手を掴まれたら最後、待っているのは破滅なのと同じ理屈。
「警察はどっちを信じるかなぁ。わたしの言葉かな? それとも御南斗のことかな?」
これにはもうどうしようもなかった。
「く、くそ! ……分かった。要求を呑もう」
「いぇっしゃい!」
幸い、金銭難に陥ってはいない。一人分の生活費なら問題なく賄える。
それに彼としても家族が増えるのは嬉しかった。これでようやく独り暮らしから脱却できるとなると浮き足立ってはいられない。
御南斗の「女の子と一緒に住めるから」という本音は秘密でお願いします。
「そういえば、まだ君の名前を教えてもらってなかった気がする」
「え、わたしの名前? そんなのないよ」
そういえば彼女は記憶がないのだと、彼は思い出す。
「う?ん、じゃあ、好きに呼んでいいか?」
「いいよ!」
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