第1章

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あの人の中じゃ… 俺が子供とわかった今でも、それを受け入れていなくて。 だから俺にあんなことを。 俺が言いたいよ。 麻美を返してくれって。 あんたがあんな事さえ調べなかったら今頃は、 あの頃のまま、 あの辛い事件を乗り越えて、二人で将来を見据えて頑張ってた。 あんたが俺を子供だと認めていないように、 俺だってあんたを母親だと認めちゃいない。 来るんじゃなかった… もしかしたら今までのことを心から詫びて、 そんなこと望んじゃいないけど、 抱きしめてくれるかも知れないなんて… 考えた俺が、 バカみたいだ! 「すまない。 頭が混乱してるんだ。 時々はしっかりして、 キミのことを話してたりするんだけど… 今日は調子が良くないらしい…」 無理矢理あの人を奥の部屋に押し込んで、 父親が言った。 「いえ。別に。 何の期待もしていなかったので… 部屋の方はこちらで解約の連絡をしますので、 長い間、お家賃の方、ありがとうございました…」 麻美の話もしていない。 だけど、 ここに居たら俺まで何かにとりつかれそうだ。
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