第1章

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「ずいぶんと雰囲気が変わったな。 でも、 元気そうじゃないか…」 変わらない顔で迎えてくれたマスター。 「ご無沙汰してます。 あの… やっぱ俺、あっちでやってみることにしました。 今、麻美の父親にもそう話してきて… 正月休みの間に部屋を片づけて、 解約しようと思って。 いろいろと考えてもらったのに、 すみません…」 今日はやってないかと思った。店。 大晦日だし、 こんな日はコーヒーをのんびり飲みの来る人なんて殆どいないから、 いつもは閉めてたのに… 「まあそれも人生さ。 あ、今日は二階の大掃除だとか言ってさ、 邪魔者扱いさ。 だから店を開けてる。 それにおまえも帰ってくるような気がしてさ…」 客が居ないから雑巾を持ってガラスを磨いてる。 「コーヒー、勝手いれて飲んでくれ。 手が塞がってるもんでな…」 気を遣わせないように、普通にしてるのが、 凄くわかって… 涙が出そうになる。 そして、 勝手にカウンターの中に入り、 懐かしい香りをいっぱいに吸い込んで、 慣れた手つきでネルドリップのコーヒーを…。 数ヶ月離れてても、 体は覚えてるもんだな 「マスターのもいれましたよ?」
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