99人が本棚に入れています
本棚に追加
「あんたが男だからよ」
あ、そっちか。
それにしても下品だ。
こんな誘い方ってないだろう。
「行くの、行かないの」
高圧的に言われ僕は怯んだが、行くという選択肢はない。
なぜなら僕は、したことが無いからだ。
初めては好きな人とと決めている。
女嫌いなのに笑っちゃうだろ。
「行きません」
「どうしてよ。私が相手をしてあげるって言ってんのよ」
「あなたが好きではないからです」
結城さんは椅子を倒して立ち上がると、僕の目の前に来る。
この人は見るたびいつも怒った顔をしていた。
今もそう。
「魅力が無いってこと?」
魅力はある。でも僕にはあんまり必要ない。
「女として見れないってこと? 可愛げが無いから? 優柔不断だから?」
畳み込む質問をした結城さんは、僕を見ながらその後ろに誰を見ているんだろう。
鼻を赤くして泣くのを堪えているのは、その人に対する意地に思う。
最初のコメントを投稿しよう!