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ブツブツと小さな声で彼女は呟いている。
それは辛うじて、神経をとがらせ、鋭敏化している彼の耳にギリギリ届いていた。
「でも、タタラまで、奴らのせいで失いたくない」
そんな彼女の姿を見た彼は、一瞬陽炎のような淡い炎が舞い上がっているのかと、錯覚した。
薄らぐような儚げでいて、柔らかな炎。
しかし、包まれれば全てを焼き尽くす烈火の炎……
ゆらゆらとそれが目の前に静かに吹き上がっている。
彼は目を見張った。
それは坑道で見たときの彼女とは比較にならない……
「これは僕の戦いだ」
明確な意志を持った声……
「……」
そう……それでこそ……
お前は美しい……
素直にそう思った。
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