プロローグ

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 目指す場所は盆地にあった。  うっそうとする森が辺りを取り囲み、侵入者を拒む。  文字通りの密林が広がっていた。  ただし、人間というのは貪欲だ。  そのような人など足を踏み入れられない場所にも道を作る。  一本の筋が永遠と続いているようだと思った。  そのラインのみが人間の領域。  だが、それで十分。  方角さえ分かれば、人間は何処だって行くのだ。  最初の一歩を踏み出せる人間というのは、どんな心境で行くのだろうか?  俺には全く理解出来なかった。  そして、俺もまた、先ほどいった欲の塊である人間に違いない。  なぜなら、これから向かう場所はそう言った人間しか集まらないからだ。  そのような場所に秩序はないとも聞く。  だが、面白い……  面白いというのはいいことだ。  それがなければ人生など、退屈なだけだ。 「さぁって、一花ふかすとしますか!」  素直な気持ちを言葉に表した。  それは自分自身をリラックスさせる方法でもある。  自然に笑みが浮かんでいた。  しかし、そんな笑みは一瞬で消え去ることになる。
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