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突如、大きな音が鳴り響いた。
音……
ただの音じゃない。
それは奇声……
人ならざるモノの奇声に違いなかった。
すぐさま、自らの得物を抜きはなつ。
得物の影は一瞬大きくしなり、そして彼の手の中で一振りの剣となった。
魔道具で強化された脚力で、一瞬にして手短な巨木の枝に飛び上がる。
「いきなりかよ……」
この地方に来るのならば、多少の危険生物がいるのは承知の上。
なぜなら、今向かおうとしている場所は特Sランクの危険地域に指定されている場所だ。
ある程度の実力と実績、推薦状がなければ出入りすら出来ないのだ。
遠くを見渡してみると、一カ所土煙が上がっている場所があった。
「やれやれ、派手だねぇ」
土煙はゆらゆらと上がり、時に激しく吹き出している。
ということは、その下でまだなにかが暴れている。
「この際だ、この辺りでどんなんが暴れているのかって、見してもらおうか」
剣を油断なく握りしめ、空いている右手で老木の幹に寄りかかるようにして体重を預けた。
煙を中心に、周りの木がなぎ倒されていくのが見て取れた。
かなりの巨体と想像がつく。
ならば、いるのは巨体同士のぶつかり合いか?
危険生物の巣窟ならば、その縄張り争いも熾烈なのかもしれない。
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